サイクルトレーニング

サイクルトレーニングとは、一定の周期(サイクル)でトレーニング重量を変えて“筋トレの効果の停滞”を防ぐ、画期的な筋トレ法です。

主に、ベンチプレス、スクワット、デッドリフトなどのBIG3と呼ばれる主要種目で、サイクルトレーニングが使われます。

なぜ、サイクルトレーニングは停滞を打破できるのか?

サイクルトレーニングを筋トレに取り入れることによって、筋肉のある特性に抵抗することができます。

刺激に慣れると筋肉の成長が止まる

筋トレによって筋力や筋量を上げていくには、少しずつ使用重量を上げていく必要があります。

しかし、筋肉には刺激に慣れると成長が止まるという特徴があるため同じようにトレーニングを続けていると、使用重量が停滞してしまうことが多くなります。
このような時に、サイクルトレーニングを取り入れ、刺激を変えると良いでしょう。

使用重量を周期的に変えて、効率的に成長!

サイクルトレーニングは筋力アップを目的としたテクニック

サイクルトレーニングでは、“最後の記録に挑戦する日”以外、メインの種目で筋肉を追い込むことはしません。
なので、どちらかというと筋力アップ(神経系の強化)を目的としたものです。

しかし、たとえ筋肥大を目的とした筋トレでも、使用重量が停滞しがちでは、筋量の伸びもストップしてしまいます。

筋肉の発達が停滞してしまった時には、サイクルトレーニングのような筋力アップを重視した筋トレも必要です。

筋肥大を目的とした筋トレなら一時的にサイクルトレーニングを組む

「筋力アップも必要」とはいえ、
“筋肥大が目的で筋トレをやっている人”が、常にサイクルトレーニングを組んでいては非効率かもしれません。

筋トレで筋肉を発達させることによって、体型や健康状態を改善、維持しようとしている一般的なトレーニーにとっては、サイクルトレーニングはあくまで応急処置的なものに思えます。

筋力を伸ばし、いかに重いバーベルを挙げるかを競うパワーリフターの方でも、試合の前以外は筋肥大を目的とした筋トレ(8~10回くらいで限界の負荷)も行っているそうです。

サイクルトレーニングのやり方

サイクルトレーニングには、より確実に効果を出すための決まりがいくつかあります。順番に見ていきましょう。

約2ヶ月で終わるサイクルを組む

同じ刺激の筋トレを続けていると大体2ヶ月くらいで停滞すると言われています。

ただし、これは筋肉の大きな筋トレ上級者を基準したものなので、まだ初心者だったり、体重が軽めの方であればもう少し短くなります。

この『同じ内容のトレーニングを続けていると停滞してしまう期間』より短い期間のサイクルを組む必要があります。

7周程度で1サイクルとする

サイクルトレーニングは一般的に6週間で行われることが多いです。休息期間を入れると7週間です。

ただし、あくまでこれは筋トレ上級者のサイクルなので、使用重量によっては1週間に一度では頻度が少なすぎる場合もあります。
なので、「7"週"」ではなく、普段自分が組んでいる筋トレメニューとプログラムを基準とした「7"周"」で組むのが無難でしょう。

軽めの重量から始め、最後に記録に挑戦する

自分のベスト記録の70%~80%くらいの重量から始め、最終目標は自分のベストに2.5~5kg程度を足した重量にします。使用重量が重くなってきた後半では、セット数を減らします。

自己ベストが100kg×8回の人の場合の具体例を表にすると以下のようになります。

サイクルトレーニングの具体例
使用重量 回数 セット数
1周目 77.5kg 8回 2セット
2周目 82.5kg 8回 2セット
3周目 87.5kg 8回 2セット
4周目 92.5kg 8回 2セット
5周目 97.5kg 8回 1セット
6周目 102.5kg(記録更新) 8回 1セット
7周目 休息

このように一通りサイクルを終え、
記録を更新できた場合は、また更に2.5~5kgほど重量を上げ、
更新に失敗した場合は同じ内容で、次のサイクルに突入します。

更新に失敗した場合ですが、
次のサイクルに突入して1周目からやり直すのではなく、
「7周目の休息の代わりにもう一度記録に挑戦し、8周目に休んでから次のサイクルに突入する」
という手もあります。

サイクルの前半ではフォーム(動作)を確認する

サイクルの最初の方は重量に余裕があるので、トレーニングフォームに集中しながら上げることができます。

フォームは、重量を上げるためにも、ターゲットに効かせるためにも、筋トレ中の怪我を防ぐためにも重要です。後半までに固めておきましょう。

また、速筋のⅡb繊維(筋トレの効果がもっとも出る負荷と回数とは参照)を刺激するためにもポジティブでは爆発的な挙上を心がけましょう。

これは、本番で爆発的に挙げるための準備でもありますが、特にメイン種目で筋肉を追い込まないサイクル前半では
「ぎりぎり持ち上がる時しか動因されないⅡb繊維」は刺激されにくいため、爆発的挙上によって動因しておく方が効果的です。

サイクルの前半は補助種目をしっかり行い、後半は補助種目を控えめに行う

サイクルの前半では、メイン種目は軽めにしかやらず、ターゲットの筋肉が追い込まれないので、その分、補助種目をしっかり行います。

例えば、ベンチプレスのサイクルトレーニングを実践する場合、ダンベルベンチプレスダンベルフライなどの補助種目もしっかり行う必要があります。また、肩や上腕三頭筋などの補助筋もしっかり鍛えましょう。

後半では補助種目を省いたり、軽めにするなど控えめにします。

サイクルトレーニングの注意点

サイクルトレーニングを実践する際の注意点をいくつかあげておきます。

筋トレ中の怪我に注意

『軽めの重量を扱う前半から爆発的挙上をこころがけましょう』と先ほど言いましたが、
この時、関節が伸びきった時に痛めないように注意してください(軽めといっても十分な重量なので伸び切った時に痛めるほど勢いよく上がるということは滅多にないと思いますが・・・)。

関節の怪我に注意しましょう

サイクルトレーニングはそれなりの期間を使うので、一度怪我をして水の泡にしてしまうと損失が大きくなってしまいます。

しかも、損失を恐れるあまり、怪我をしたのに無理に続行して"更に怪我を悪化させるという悪循環"を生みかねないので注意してください。

サイクルトレーニングはたまにが丁度いい?

サイクル前半では、補助種目で追い込むとはいえ、メイン種目を軽めで限界まで行わないので、やはり、サイクルトレーニングは筋肥大に向いているとは言い難いでしょう。

通常のトレーニーは、使用重量が長らく停滞してしまった時のみ、サイクルトレーニングを取り入れるのが無難です。

また、パワーリフターであっても、十分に筋量のついた上級者以外は、オフシーズンから日常的にサイクルトレーニングで鍛えるのは効率が悪いかもしれません。

サイクルトレーニングの本質は、
「使用重量を伸ばすための筋力アップトレーニング」
ですが、筋肥大の効果を逃さないためには、やはり補助種目をネガティブで効かせてしっかりターゲットを追い込む必要があります。

最終目標を高く設定しない

特に停滞した時にサイクルトレーニングを取り入れる場合、目標設定を高くしてしまうと失敗してしまいます。

ただでさえ、伸び悩んでる時なので、いくら準備期間を設けても大幅な記録更新は厳しいものがあります。少しでも良いので記録を更新し、確実に停滞(プラトー)を打破することを重視しましょう。

少しずつ確実に使用重量を伸ばそう

サイクルトレーニングのメリット

サイクルトレーニングの効果は筋トレの刺激(重量)を変えて、より確実に記録を更新(プラトーを打破)できることです。

この他にも、主に精神面でのサイクルトレーニングのメリットがいくつかあります。

継続しやすい

サイクル前半ではメイン種目であまり頑張る必要がないため、筋トレをする前から憂鬱になることがありません。

個人的には、「今日は、あまり筋トレしたくないな・・・」と思うときに一番辛いのは、気合を入れてメイン種目で高重量を扱うことだったりします。

ですが、サイクルトレーニング期間中は、1回ごとのトレーニングは若干物足りないくらいで終えることになります。

これによって、「もっとトレーニングをしたい。限界に挑戦したい。」というモチベーションを、記録更新のために高めていくことができます。

筋トレに限らず、
“少し物足りないくらいで終えること”
“達成できそうな目標”
というのは、継続性を上げるのに有効だそうです。

本番の緊張感を高めることができる

通常の筋トレでは毎回、「回数や重量を伸ばすこと」が目標になるため、記録が更新できたり、できなかったりに慣れてしまい、ダラダラとしたトレーニングになってしまいがちです。

サイクルトレーニングの場合は、本番の日に向けて時間をかけて準備をした分、徐々に緊張感が高まり、先ほどと似ていますが「記録を更新するぞ」というモチベーションを高めていくことができます。

健康管理に身が入る

サイクルの前半では回復に余裕があり、後半では体に負担がかかります。

このように、メリハリをつけて適度な負担をかけることが出来るので、疲労が溜まり過ぎることなく少しずつ体を丈夫にすることができます。

また、通常の筋トレの手順に比べると、本番の日と準備期間が存在するサイクルトレーニングの方が、
「本番で成功させたい。そのために万全な準備をしたい。」という気持ちから健康管理にも自然と気をつけるようになります。

このように、サイクルトレーニングを組むことは、ただ使用重量を伸ばして筋トレの効果を上げ続けるだけでなく、筋トレを確実に実行するために必要な精神面での効果も大きいです。