ダイエットの栄養バランス
タンパク質、脂質、炭水化物などの三大栄養素のバランス(PFCバランス)を中心にダイエットに効果のある栄養バランスや、注意する点、低脂肪高タンパクな食品などについて説明しています。
PFCバランスとは?
より確実にダイエットを行うにはカロリーコントロールだけでなく、栄養バランスを整える必要があります。
PFCとはプロテイン(タンパク質)、ファット(脂肪)、カーボ(炭水化物)のこと。つまりPFCバランスとは三大栄養素のバランスのことです。特にこの三大栄養素のバランスを整えることが必要となります。
三大栄養素についてよく覚えていない人は、痩せるための基礎栄養学で復習しておきましょう
PFCバランスの目安
では、三大栄養素の摂取カロリーはどのようなバランスが理想的なのか?具体的な理想値の目安をみてみましょう。
- P:タンパク質(プロテイン)・・・15%
- F:脂肪(ファット)・・・25%
- C:炭水化物(カーボ)・・・60%
上記のような栄養バランスが良いとされています。しかし注意しなければならないのが、この目安は、栄養素の量ではなく、カロリーを基準にした数値であるということです。
三大栄養素のそれぞれのカロリーを覚えているでしょうか?
もう一度おさらいしてみましょう。
- P:タンパク質(プロテイン)・・・1g,4kcal
- F:脂肪(ファット)・・・1g,9kcal
- C:炭水化物(カーボ)・・・1g,4kcal
この通り、脂肪だけ1g9kcalもあり、カロリーから量を換算すると、かなり少なくなります。栄養バランスを調整する時は特にこの点について注意する事が必要といえるでしょう。
前のページでカロリーコントロールを覚えたら、今の自分にとって適切な摂取カロリーを、この栄養バランスに当てはめて食事メニューを考えてください。
では具体的に量に換算するとどのようなバランスになるのか、中程度(立ち仕事や営業、小さい子のいる主婦など)の生活を送っている、20代で平均的な体格の成人女性の、1日の総摂取カロリーの目安である2000kcalで見ていきたいと思います。
これはあくまで体格や体質、生活強度による個人差があるものなので、実行する時は自分にあった摂取カロリーを当てはめてください。
1日2000kcal摂った場合のバランスを重量で表すと
- P:タンパク質(1g,4kcal)・・・2000kcal×0.15(15%)=300kcal→÷4kcal=75(g)
- F:脂質(1g,9kcal)・・・2000kcal×0.25(25%)=500kcal→÷9kcal=55.55・・・(g)
- C:炭水化物(1g,4kcal)・・・2000kcal×0.6(60%)=1200kcal→÷4kcal=300(g)
【平均的な女性のPFCバランス】P:75g F:約56g C:300g
必ずしもここまで細かく計算して合わせないといけないわけではありませんが、これに食品の成分を見てメニューを考えていくと、大体どのような食事バランスが健康的で肥満を防げるのかがよくわかると思います。
炭水化物(カーボ)を抜いてはいけない
上の数値を見ると、炭水化物が他の二つを大きく上回っています。
ダイエットというと炭水化物を抜いてしまう人が多いですがこれは間違いです。
炭水化物食品は主食ですから、当然抜けば摂取カロリーが極端に低くなります。
この場合体重が落ちても、炭水化物が少ないバランスだからというより、食事による水分が極端に少ないから体重が落ちたというパターンがほとんどでしょう。
しかし、極端な食事制限は「体脂肪が落ちる条件」から外れてしまうので意味のないことだと、順序良く学んできた方は十分理解していただけてると思います。
また、唯一の脳のエネルギー源であるブドウ糖は炭水化物食品を分解して得られるものですから、炭水化物をカットすることは脳にとっては絶食に近い状態が続くことになります。炭水化物をカットすると、脳にエネルギーを送るために、糖新生といって、筋肉を分解してアミノ酸などからブドウ糖を作るので代謝が大きく落ちてしまうしプロポーションも悪くなるので逆効果です。
インスリン分泌を抑えられ、また脂肪酸も糖新生に使われることにより、一時的には脂肪減少に効果があるかもしれません。しかし、続けていると徐々に省エネモードになり、筋肉が減少し、みるみる代謝が落ちていってしまうのでリバウンドは時間の問題です。体重が増えなくても、体脂肪が増え、徐々に筋肉が減り肥満が進行していきます。
また、炭水化物カットは低血糖が続くので常に空腹を感じ、非常に辛い食生活が続きます。しかも、数日続くと脂肪酸が糖新生ではなく酸っぱいニオイのするケトン体の合成に使われるようになり、体臭が酸っぱくなります。
炭水化物を極端にカットしても効果は期待できず、悪いことばかりです。ダイエットでは炭水化物をやや控えめのバランスにす程度が良いでしょう。
脂肪(ファット)を控えよう
脂肪はカロリーを基準にしたPFCバランスでは、タンパク質の約1.7倍ありましたが、脂質は1g9kcalもあるために、分量に変換するとタンパク質の方が約1.4倍多くなってしまいます。
現代の食生活では脂肪を多く摂りやすく、また次のページで何故かわかると思いますが、中性脂肪に変換されやすい炭水化物を多くとるため、すぐに脂肪が余ってしまいます。意識的に避けないといけません。
また、脂肪が多い食事と少ない食事では同じカロリーでもかなり量に違いがあり、脂肪の少ない食事では、必要な炭水化物やタンパク質、また、微量栄養素も多く摂取できて、健康的で無理のないダイエットを続けやすいということになります。
しかし、「重要な栄養素」のページでも説明したようにオメガ3系のα-リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの体内で合成できない必須脂肪酸の中でも不足しやすい脂肪は食事、サプリメントから意識的に摂る必要があります。
これらは植物性脂肪や魚の脂肪に含まれますが、だからといって摂り過ぎるのもよくありません。動物性脂肪やコレステロールの多い食品を摂るよりも、植物性脂肪や魚の脂肪の方が過酸化脂質に変化しやすく、悪玉コレステロールを増加させ、心筋梗塞や動脈硬化の原因になるからです。
タンパク質(プロテイン)の重要性
ダイエット中は筋肉が減少傾向にあるため代謝が大きく下がってしまい、体型も崩れてしまうので出来るだけ減少を抑える必要があります。
この筋肉の減少を抑える為に筋肉を構成するタンパク質が大切であり、タンパク質は筋肉以外にも、肌、髪、骨などを作っているので、これらを維持するためにも必要不可欠です。
しかし、消費カロリーが摂取カロリーを上回る必要があるダイエット中では、足りない分のエネルギー源として、タンパク質が代用されてしまい、このために、筋肉などが減少してしまいやすいわけです。
更には、特異動的作用(食事誘発性体熱産生、DIT作用)という食事を取るだけで熱を発生させるという作用があるのですが、これは消費カロリーの約10~20%を占めます。この特異動的作用では、他2つに比べタンパク質がエネルギーとして消費される割合が約30%と非常に高いのです。
この事から、ダイエット(減量)中は栄養バランスを通常の理想値より、ややタンパク質に比重を置いたバランスにすると効率的に体脂肪を落とせると言えます。
ダイエット(減量)中はPFCバランスの目安から、脂肪、炭水化物をやや減らし、その分タンパク質の割合を増やすと良いでしょう。
低脂肪、低価格な高タンパク質食品
ダイエット中はタンパク質に比重をおきましょうと述べましたが、タンパク質食品は植物性も動物性も、脂肪を多く含んでいる食品が多いため、PFCバランスを整えるためには食品を選ぶ必要があるのです。
そこで、低脂肪高タンパクで低価格な食品を紹介します。もちろんカロリーはある程度ありますが、これは必要なカロリーであり、無駄な脂肪によるカロリーは非常に少なく、同じ量の脂肪の多いタンパク質食品と比べれば非常に低カロリーです。
代表的なものは、鶏の胸肉やささみ、卵白、プロテイン(パウダー)です。
ささみ
鶏肉の中では特に低脂肪高タンパクです。ささみは重量と値段で比べると高く感じますが、胸のように皮がなく水分も少なめ、ももよりも低脂肪、そして当然タンパク質は多くなるので、栄養素と値段のバランスで比べれば高くはないでしょう。しかも切ったり、脂肪の多い皮を剥いだりといった手間もあまりかからず、低脂肪の割にはおいしいのでおすすめです。
鶏肉を食べる場合、脂肪の多い皮はなるべく避けましょう。コラーゲンがあるからと皮も食べてしまう方が多いですが、コラーゲンもタンパク質の一種であり、肉の部分の方がタンパク質たっぷりでコラーゲンが多く作れるので、脂肪を大量にとってまで皮をわざわざ食べる必要はありません。過剰な油は美容にも逆効果と思われます。
そもそもタンパク質が不足していればコラーゲンもエネルギー源として消費されてしまうので、コラーゲンを摂る場合はタンパク質と一緒にたっぷり摂れるような食品(牛すじなど)を食べましょう。
卵白
鶏卵は、完全栄養食品とも呼ばれるほど多様な栄養素を含んでいます。しかし、卵黄の脂肪は思った以上に多いので食べ過ぎは注意してください。卵白のみの方が圧倒的に低脂肪(カロリー)高タンパクです。卵黄と油を控えめに使ったオムレツなど意外と美味しく頂けます。
卵のタンパク質は生の状態では調理した状態に比べ利用率が90%から50%程度の落ちるといわれているので注意してください。半熟は消化に良いのですが、生は消化にも悪いそうです。
プロテイン
プロテインというのはタンパク質の意味ということが、PFCバランスの説明の段階で理解していただけると思いますが、プロテインは筋肉増強剤などの薬ではありません。
プロテインというのは厳密には牛乳タンパクや大豆タンパクから精製されるプロテインパウダーのことで、要はタンパク質の粉末です。
もちろん、通常の食品で栄養バランスをとれるに越したことはありませんが、プロテインはほとんどタンパク質という状態で無駄が少なく、飲みやすく持ち歩くのも便利なので、栄養管理に最適です。詳しくはプロテイン講座やプロテインダイエットのページで。
その他
鶏肉、卵などを中心に摂りつつ、様々な特性をもったタンパク質や、必須脂肪酸、微量栄養も補給するために、他の動物性の肉、魚肉、植物性のタンパク質(大豆食品など)などもバランスよく摂るのが理想です。
豚肉などが食べたくなった時は、茹でて豚しゃぶにするなど、調理法に気をつけることで、かなり無駄な脂肪を減らせます。また、カロリーのあるタイプのタレは控えめするということも重要です。カロリーのないものも塩分を多くとってしまうといけないのでやはり控えめにしてください。
このページのまとめ
- PFCバランスを調節する。
- 炭水化物を抜かない。
- 脂質を控える。
- 低脂肪高タンパクな食品をとる。