筋トレの効果がもっとも出る負荷と回数とは
筋トレの効果がもっとも出る負荷と回数について説明しています。筋トレは回数をこなすほど効果があるというわけではありません。また、負荷の設定は、「こなせる回数」を目安にします。
どれくらいの負荷が効果的か?
筋トレの効果を出すためには、負荷設定が一番重要といっても良いのですが、負荷に関する理論はややこしいので、面倒な方は、まとめの目的別負荷設定とインターバルを確認するだけでも十分だと思います。
しかし、この「どんな負荷が効果的か?」の項目だけでもなるべく読んでおいてください。
まず、筋トレの負荷設定の基準というのは、「何kg」など絶対的な数値ではなく、「自分が何回くらい行える負荷なのか」という相対的な基準ということを覚えておいてください。
一般的には多くの人が極端に軽い負荷で筋トレをしていることが多いです。
負荷と回数について結論から言いますと、ほとんどの目的では、限界までやれば50回や100回できてしまうような軽い負荷ではなく、自分にとってある程度重くて10回くらいしか挙げられない負荷の方が効率的で楽に効果が得られます。
様々な理由をつけて、「自分の場合は軽い負荷で筋トレをすればいい。重くてきつい筋トレはする必要がない。」と思ってしまう方が多いですが、これはもったいない誤解です。
筋肉を限界まで追い込まないと筋トレの様々な効果が得られませんが、軽い負荷の方が限界まで行うのにかなりの精神力と体力を消費し、途中でストップしてしまいがちです。
これでは苦しいだけでなかなか効果が得られません。意外と「そこそこ重い負荷でやる筋トレ」の方が比較的、楽に効果がえらえるんです。
筋肉は、漸進性過負荷の原則といって、負荷や回数を上げて限界値を伸ばしていかないと発達しません。「もっと成長しないとやばい」と筋肉に思いこませるのです。なので、自分にとってある程度重い負荷を扱うことと、限界の回数まで行うことが必要です。逆にいえば理想的なレベルで負荷の増加などをストップすれば、理想より筋肉がつきすぎるということもなく、そこで維持することもできます。
ここからは、無駄な努力を省いて効率的に鍛えるために、筋肉の発達するメカニズムから効果的な負荷や回数を探っていきたいと思います。
筋肉(筋繊維)の種類
筋トレで鍛える筋肉は、体を動かす時に使われる骨格筋です。この筋肉を発達させることによって筋力をつけたり、メリハリがあり引き締まってみえる体型や、代謝を上げて太りにくい体になり、更に発達させればたくましい筋肉質な体を作ることができます。
この骨格筋の筋繊維には遅筋繊維(タイプⅠ)と速筋繊維(タイプⅡ)があり、速筋繊維は更にⅡaとⅡbにわかれます。
遅筋繊維(タイプⅠ)の特徴
遅筋繊維は収縮速度が遅くて力が弱いのですが、耐久性に優れているので、日常的な動作や、長距離走など大きな力、速さを発揮しない運動などで使われます。
速筋繊維(タイプⅡ)の特徴
速筋繊維は逆に、収縮速度が速くて力が強いので、瞬発的に大きな力を発揮する時に使われます。速筋の中でもⅡbの方は特に収縮速度と筋力が高く、また、遅筋がほとんど発達しないのに対して、大きく発達するのもこのⅡb繊維です。
Ⅱa繊維は遅筋とⅡb繊維の中間的な特徴を持っています。
以上のことから、バルクアップやシェイプアップなどの目的で筋肉を少しでもつけようと思う人にとっては速筋、特にⅡb繊維を鍛えるのが最も効率的といえます。
つまり、筋肉をつけたり、筋力アップをするには自分にとってある程度大きな負荷を使う必要があります。
また、Ⅱb繊維は、ぎりぎりで持ち上げられるという時にしか使われないので、なるべく少ない回数で「限界になる」ような重さの方が手っ取り早いということになります。無駄に体力や時間を使ってしまうと、筋分解が進んでしまうので逆効果にもなってしまいます。
成長ホルモンを分泌させる負荷
成長ホルモンとは、筋肉を増強し、体脂肪を燃焼(特にお腹)させるホルモンです。骨や皮膚を作り、女性の場合土台の胸の筋肉を増強するだけでなく、乳房自体を大きくするバストアップ効果(受容体に結合し乳腺の発達を促進)もあります。
このように、体作りや美容、健康において成長ホルモンはとても重要です。
成長ホルモンは筋トレによって著しく分泌されます。
成長ホルモンは筋肉の血液中の、乳酸などの代謝物質の濃度が高まることによって分泌されます。代謝物質の濃度を高めるには、ただ代謝物質を発生させるだけでなく、代謝物質を留まらせて濃度を上げるために、血流を制限する必要があります。
最大筋力(1回しか挙げられない重量)の50%以上の負荷になると筋肉に強く力が入り血管が締め付けられるため、血流がほぼ遮断されます。しかし、一時的に締め付けるだけでは代謝物質を溜めて濃度を上げることができないので、あまり反動を使って持ち上げたりせず、常に筋肉に負荷をかけ続けることが必要です。
Ⅱb繊維は、MAX(最大筋力)で1回行うだけでも動員できますが、成長ホルモンを分泌させるためにはしばらくの時間血流を遮断するために、1回ではなく50%以上の負荷で数回こなし少し時間を稼ぐ必要もあるということになります。
最大筋力の50%ってどれくらいの負荷?
最大筋力の50%というのは、回数で負荷を表すと大体20回(1回5秒かけるとして)が限界の負荷です。つまり、発達しやすいⅡb繊維を動員させ、成長ホルモンの分泌も促進するには1回以上~20回くらいまでの負荷が適切ということになります。しかし、これでは幅が広すぎるので、回数について後でもっと明確な答えを導き出していきます。
成長ホルモンの分泌を促進させるインターバル
インターバル(休憩)の長さも成長ホルモンを分泌させる上で重要になってきます。
セット間のインターバル(休憩)は長くとりすぎてしまうと、代謝物質が流れてしまうのでよくありません。つまり基本的にはインターバルは短い方が、成長ホルモンは分泌されやすいのです。
しかし、速筋繊維の動員は高めの負荷で限界回数まで行う必要があるため、インターバルが短すぎると呼吸が整わずに筋肉よりも体力が先に力つきてしまいます。体力が先に尽きてしまえば、筋肉を追い込むことができないので効果があまり得られません。
なので、体力がある程度回復する範囲の中で短めのインターバルをとります。この際における体力の回復というのは、ターゲットの筋肉の疲労ではなく、呼吸が整ったり集中力や気力が戻るなどです。
目安としては、大きな負荷を扱える種目では2~3分、あまり大きな負荷を扱えない種目では1分~2分程度がバランスが良いと思います。
エネルギーシステムと回数
筋力は筋肉中のATPという物質がADPに変わる過程で生み出されます。このATPは非常に少ないため2~3秒でなくなってしまい、動作中は常にATPを再合成しながら筋力を発揮しています。
ATPの再合成は、①CP系システム→②乳酸-グリコーゲン系システム→③エアロビック系システムという3種類のシステムが順に使われます。
CP系システム
CP系システムはCP(クレアチリン酸)を再合成に使いますが、CPの量も少ないため10秒程度しか持ちません。
乳酸-グリコーゲン系システム
乳酸-グリコーゲン系システムは、筋肉中に蓄えられた糖分(グリコーゲン)をブドウ糖(グルコース)に分解して使います。その過程で乳酸が発生し、乳酸もATPの再合成に使われますが、乳酸はグリコーゲンの分解の妨げにもなり、これによって筋疲労などが生じます。このシステムは約40秒続きます。
エアロビック系システム
エアロビック系システムは、酸素を利用してグリコーゲンを水と炭酸ガスに分解したエネルギーでATPを再合成します。また、筋肉中だけでなく肝臓に貯蓄されたグリコーゲンも使い、脂肪も使うので、持続的に力を発揮できます。有酸素運動や日常的な活動で使われます。
エアロビック系システムは、いわゆる有酸素運動で、持続的に力を発揮できますが最大筋力の20%程度しか発揮できないため、成長ホルモンの分泌や、速筋の参加など筋トレの効果を出すための条件を満たせません。なので、筋トレ(無酸素運動)では、必然的にCP系、乳酸-グリコーゲン系システムの2つが使われます。特に乳酸-グリコーゲン系システムでは、代謝物質である乳酸を発生させるので、成長ホルモンの分泌を促進させます。
元々あったATPの利用から合計して、1セットで、無酸素運動は長くても60秒程度が限界ということになり、逆にいえばそれ以上長く動作できる負荷では、途中まで速筋繊維を刺激できていないということになります。
主要なトレーニングは1回動作するのに平均5秒くらいです。遅く感じるかもしれませんが、特に降ろす時は脱力しないように少しゆっくり降ろす必要があり、最後の1、2回はゆっくりしか上げられません。
60秒÷5秒=12なので、筋肉を発達させるには軽めでも12回までしかできない負荷で鍛える事が効果的となります。
目的別負荷設定とインターバル
筋肥大(筋発達)には8~12回(最大筋力の70%~80%)くらいが効果的とされています。シンプルに10回前後と考えてもよいでしょう。
代謝アップ、シェイプアップも筋肥大によるものなので同じです。
8~12回が限度の負荷を持って、限界回数まで繰り返し上げ、限界がきたらインターバルをとり、同じように2~5セットほど行います。この負荷では筋力、筋持久力もバランスよく鍛えられるため、筋トレではこれくらいの負荷がおすすめです。また、インターバルは種目に合わせて1分~3分程度が良いでしょう。
筋力アップを重視する場合は筋肉をつけることより、筋肉を操作する神経系の強化を狙い潜在的な筋力を引き出します。そのために、1~3回(最大筋力の90%以上)の高負荷で行い、インターバルは筋肥大は目的としないため、筋疲労の原因となる代謝物を流し高負荷を上げるためのATPの再合成を優先し、3分~5分とたっぷりとります。ただし、潜在的な筋力は筋肉の太さにも比例するため10回前後の筋肥大を目的とした筋トレも取り入れる必要があります。
筋持久力を重視する場合は遅筋を動員するために、20~30回が限度の負荷で行い、インターバルは30秒と短めにとります。回数が多いと限界まで行うのが大変に感じるかもしれませんが、限界までしっかり追い込まないと筋持久力も伸びないので注意しましょう。
目的(効果) | 負荷 | 限界回数 | インターバル |
---|---|---|---|
筋力、瞬発力強化 | 最大筋力の90%以上 | 1~5回 | 3~5分 |
筋肥大、代謝量強化 | 最大筋力の80%~70% | 8~12回 | 1~3分 |
筋持久力強化 | 最大筋力の50% | 20~30回 | 30秒 |
全くこの通りにしないと効果が出ないわけではなく、これを目安に行うと筋トレの効果が出やすいというものです。
最大筋力(MAX)を計測するのはなかなか難しいと思うので、下のRM換算表を参考にしてください。あくまで目安なので必ずしもこの通りというわけではありません。
RMというのはRep Max(Repetition Maximum)の略で、限界回数(最大反復回数)という意味です。覚えておくと筋トレの勉強やプログラムを作る上でとても役に立ちます。例えば、下の表(あまり当てになりませんが)でいうと、ベンチプレス80kgが8回できたら、MAXはおそらく100kgくらいということです。最初は軽めから試してください。スポーツ経験のない男性のMAXの平均は、トレーニング開始時でスクワット60kg、ベンチプレス40kg、デッドリフト80kgくらいだそうです。女性はその半分くらいでしょう。また、体重にもかなり左右されるので、体重が重い人はスポーツ経験がなくても比較的もっと上がると思います。
1RM (MAX) |
2RM | 3RM | 4RM | 5RM |
---|---|---|---|---|
100% | 95% | 92.5% | 90% | 87.5% |
6RM | 7RM | 8RM | 9RM | 10RM |
85% | 82.5% | 80% | 77.5% | 75% |
11RM | 12RM | ・・・ | 20RM | |
72.5% | 70% | ・・・ | 50% |
このページのまとめ
- 筋トレは、どのような目的でもある程度の重く感じる負荷の方が効率的である。
- 筋肉には遅筋繊維(タイプⅠ)と速筋繊維(タイプⅡa,b)があり、少しでも筋肉を増やしたい場合は速筋繊維のタイプⅡb繊維を鍛える。
- 筋肉を発達させたり、代謝をアップさせるためには、8~12回(10回前後)で限界になる程度の負荷で限界まで行う。
筋トレの動作をすれば、筋トレの効果がえられるわけではないということに注意してください。負荷設定を誤れば、運動量(カロリー消費)が少ない有酸素運動でしかありません。